ヤマチュウさんのチホク会産小麦粉

Sep 12 , 2020

ヤマチュウさんのチホク会産小麦粉

北海道では小麦の収穫を終え、これからは新しい小麦の製粉が始まります。

クアリタは開店当初から株式会社 山本忠信商店(通称:ヤマチュウ)の小麦粉を使っています。

(以下、「ヤマチュウ」敬称略)

ヤマチュウのチホク会産小麦粉が、店の方向性を決めたと言っても過言ではありません。

ヤマチュウの小麦粉の魅力をさらに知り、発信したいと考えていたところ、ヤマチュウの食品営業部の大友さん、札幌営業所の伊藤さんにお会いする機会に恵まれました。

 

伊藤さんは、開口一番「ヤマチュウは北海道の小麦生産者と最も近い所にいる会社」と言われました。

作り手と食べ手を繋ぎ」「畑と食卓の距離を縮めること」。

これがヤマチュウの仕事だというのです。

聞けば聞くほど、このミッションために、社員の皆さんが挑戦し、成長し続ける姿が見えてきます。

「美味しさの秘密」の話は出てきません(笑)。

 

企業秘密のため、詳しく話せない可能性は大いにあります。

とはいえ、お二人とお話していると、小手先で「美味しさ」を追求するより、農家さんと協力して生産技術を向上させ、消費者のニーズに応えた「結果」、魅力的な商品が生まれたという印象を受けます。

これこそが、「ヤマチュウのチホク会産小麦粉」の重要な要素かもしれません。

なので、まず今回は「ヤマチュウ」のお話をします。

 

ヤマチュウは、豆の取扱を目的として1960年に設立されました。

小麦事業に取り組み始めたのは1989年のこと。

翌1990年に小麦生産者と「チホク会」を立ち上げました。

この「チホク会」は、当初は情報交換や親睦を目的としていましたが、次第に勉強会や小麦普及など、その活動の幅を広げていったそうです。

2011年、十勝の畑の真ん中に、チホク会産小麦のみを挽く自社の製粉工場「十勝⭐︎夢mill」が完成しました。

2013年に札幌営業所を開設。クアリタの開業も2013年ですから、ヤマチュウが自社でチホク会産小麦を挽き、販路を拡大し始めてまもなくの頃に、私たちもその粉を扱うようになったわけです。

 

「チホク会」設立から、生産者や消費者を巻き込み、北海道・十勝生まれの小麦粉を生み出すまでの労力を想像すると、本当に頭が下がります。

生産者のお仕事に、自分のこととして関わる。一緒に喜び、葛藤する。

集荷や製粉まで担うようになり、さらには消費者に届けるために奔走し、意見を汲み上げ、生産者に提案する。

それを繰り返す。

本気で、チームで続けていくからこそ、その熱意が派生し、関わる人々が自分の仕事にやりがいを見出し、仕事の質が高まり、ストーリーが生まれ、五感で共感を得る食材が出来上がっていったのではないか。

生産者の顔が見える」ことの価値は、こういうところにあるではないでしょうか?

 

ヤマチュウは、社員を大切にする社風で、先代の社長は「教育の計は百年にあり」が口癖だったそうです。

長期的な視点で社員を育てることが、社員・会社・社会にとって大切だと考えておられたのだと思います。

大友さんは「若い人たちが非常に勉強熱心だ」とおっしゃっていました。

ヤマチュウでは、若い人にどんどん挑戦する機会を与え、勉強会に送り出し、海外視察も行います。

伊藤さんは、ニューヨークへ行き、アメリカのパン文化に直で触れた経験をお話してくださいました。

学歴だけにキャリアが左右されるのではなく、やる気があれば経験を積んで、責任ある仕事を任されるそうです。

簡単な仕事ではなさそうですが、やりがいが大きそうです。

 

実際にヤマチュウのチホク会産小麦粉を使って面白いと感じるのは、こちらからの働きかけに素直に応じてくれるところです。

ヤマチュウの小麦粉は、温度や湿度の違いによって、生地が変化しやすく、手が抜けません。

けれど、その反面で、反応が予測でき、「こうしたらうまくいくだろう」という、こちらの思いに生地が応えてくれる気がします。

今回、改めてヤマチュウのお二人の話を聞き、「相手を思いやる心がつながって、大切に育てられ、届けられたからなのかなぁ」と、妙に納得しました。

熱い思いと努力が詰まっていて、こちらも真剣に受け止めなければ、太刀打ちできない小麦粉。この小麦粉で、作り手としてパンをお客様にお届けできることを誇らしく思います。

陰の立役者、ヤマチュウさんには感謝の思いでいっぱいです。

その思いが皆様に引き継がれ、感動が伝わっていくように、これからも懸命にパンを作り続けます。 

 

今回、ヤマチュウのお二人にも、クアリタのパンを召し上がっていただきました。

お客様に「美味しい」と言ってもらえる時は、いつもとても嬉しいのですが、小麦粉の作り手の方々に「美味しい」と言ってもらえることも、また格別な喜びでした。

ひとつの食材が形を変え、人々の手を渡って、また戻ってくる。

食べ物を介して、心が通い、つながる瞬間は、本当に幸せです。

 

ぜひ、皆様にも、クアリタのパンで、ヤマチュウの小麦粉を味わっていただければ幸いです。

 

ヤマチュウさんのウェブサイトはこちら